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腹圧性尿失禁からの開放 -女性泌尿器科-

(注:実在の患者さまではありません)

Aさんは、55歳。2人の子どもの出産歴があります。
30歳の時に、1人目の子供の出産。この時は、なんのトラブルもなく初産には珍しい分娩所要時間約 6時間の安産でした。
その7年後、37歳の時に、第2子を出産しました。この時は、妊娠7ヶ月ごろから尿失禁が出現し、臨月になると尿失禁の量と頻度は悪化していきました。

しかし妊娠中の尿失禁は、ごく普通のことと思い、特に気にしませんでした。

そして第2子を出産、この時もアッという間の安産でした。
分娩後数日は、ほとんど全失禁状態でした。前回と明らかに違う失禁の状態に少しAさんはとまどいましたが、退院し育児が忙しくなり、気にするひまがなくなってしまいました。
1ヶ月ほどで、パットがなくても困らないくらいまで、症状は改善しました。その後は、年に3~4回くらいは、くしゃみやせきで尿がもれることはありましたが、別に病気と思わず過ごしていました。

 2年くらい前より、尿失禁の頻度が多くなりました。
以前のようにせきやくしゃみでの尿もれに加え、さらに下り坂を歩いたり、階段を下ったり、走ったりする時に尿もれが出現するようになったのです。さらに尿の回数も、以前は1日5回程度だったのが、10回以上の頻尿となってしまい、尿意があるとがまんできず、もらしてしまうこともあるようになりました。

 現在の尿もれの頻度は、1日に2回以上、量も下着を変えなくては不快な量になり、尿モレパットを1日中はずせなくなってしまい、治療を希望して女性泌尿器外来を受診しました。

診断の結果は、重症の腹圧性尿失禁だったので、手術をお勧めしました。しかしいきなり手術は、抵抗があるとのことだったので、まずは、理学療法士による個別骨盤底リハビリテーションを受けてもらい、集中的に骨盤底筋群トレーニングという尿失禁を予防できる体操を勉強してもらいました。これで尿失禁の頻度と量は約半分まで改善しました。
さらに内服薬の治療で、尿失禁の頻度と量は、さらに減ったので、内服薬と骨盤底体操でしばらく経過を見ることになりました。

最近は、月2回ピフィラティス®という、全身の筋トレをしながら、骨盤底筋を鍛えられるトレーニングの指導をトレーナーから受けています。おかげでスタイルがよくなり、まわりからは、若返ったと褒められます。

 ところでAさんは、せっかく子供の手が離れた今の時期に、できるだけ旅行をしたいと考えていました。骨盤底体操の集中訓練の終了した段階では、日常の生活には、あまり不自由は感じなくなりましたが、まだ旅行に積極的に出かける気にはなりませんでした。
そんな折、クリニックの待合室でとなりに座った女性が、2年前に尿失禁手術を受け、とても快調だという話を聞き、再び尿失禁手術の説明を聞く気になったのです。
尿失禁手術は、日帰りで行うことができ、成功率は90%以上とのことでした。 

「今が一番人生でいい時期、将来のことを心配することも大事ですが、今を充実して生きることも重要です。」

という主治医の言葉もあって、ついに尿失禁手術を受けてみる気になりました。手術は、約1時間で、日帰りで終了。
その後尿失禁の頻度と量は、2~3ヶ月に1回くらいで、尿をとても我慢した時などにのみ少量だけ起こる程度となりました。
「これは50歳代の女性としては正常ですよ」と主治医には言われました。

その後Aさんは、念願のヨーロッパとカナダに旅行し、大変有意義な一年を過ごしたということです。 

女性医療クリニックLUNAグループ
理事長 関口 由紀