相手の体を○○することがSexなのではないか?~FtMのセックス事情~
イケメンtrans男性とデートしてきました♡(笑)
デートと言っても、彼女がいる人なので下心はありません(笑)
悪しからず(笑)
この男性に、FtMのSexについて教えて頂きました!
FtMとは、female to male、
つまり生まれつきの体は女性型で戸籍も女性だが、性自認が男性である男性のことです。
FtMの方の中には、男性として社会生活を送っている方が大勢います!
性別適合手術(一般的には子宮や卵巣を摘出する手術)を行い戸籍変更をすることもできますし、戸籍を変更しなくても、ホルモン療法などで男性らしい体つきになって男性として社会生活を送っている方もいます。
手術に関して言えば、戸籍変更にはこの性別適合手術が必要です。
乳房を取る、乳房切除術をする方は多いですが、penisを作る陰茎形成術を受ける方はまれです。
なので、penisがないFtMの人の方が多くなります。
また、
性指向が女性で、戸籍を変えて女性と結婚したり、女性とお付き合いをしている方も大勢います。
彼自身、乳房切除と性別適合手術を受け、戸籍を変更して男性として社会生活を送っていて、今はcis女性(生まれつきの体が女性型で、戸籍も女性)で性指向が男性の女性とお付き合いしています。
彼は彼女と付き合うときに、
「僕にはpenisがないから、penisを挿入する行為はできないんだよ」と伝えました。
もちろん、あらかじめ彼女もそのことをわかっていました。
それでも、お付き合いをしたんだから、彼女が
「penisのvaginaへの挿入にこだわりがないこと」はなんとなく想像がつきます。
しかし、彼は言うのです。
「本当に彼女は彼の性器が男性器であることにこだわりがないのか?」
もっと言えば
「彼の性器が女性器であることを気にしていないのか?」
これは、彼も彼女に聞けていないのだそうです。
FtMの人の性器ってどうなっているか想像がつかない方もいらっしゃるかも知れませんが、形は女性器です。
でも、男性ホルモンを投与しているので、剛毛。女子の剛毛とは別物です。男性の毛の生え方。そして、太ももががっしりしているので、まさに「股間の様相」が違います。さらにホルモン療法をするとクリトリスもやや肥大するので、女性のそれとは別物です。
ときどきFtMの方の内診をする、私の個人的な感想としては、
「penisと陰嚢がない男性器」という印象…。
とは言え、やっぱり女性器は女性器。
「男としての僕を好きになってくれたのに、その、好きな彼の性器が女性であることと向き合いたくないのではないか?」
と、彼は言います。
本当は
「自分の性器も触って欲しいし、見て欲しい」
「自分のvaginaに指や物を挿入するplayもしたい」
「自分の性器で気持ちよくなりたい」
そして彼女にももちろん気持ちよくなって欲しいから、
バイブなどの道具も使って、なんなら二人で同時に挿入できるタイプのバイブでplayをすることもしてみたいんだそうです。
だけど、
「彼女は道具やおもちゃを使うことに抵抗があるのではないか?」
「一見するとレズビアン同士のplayであるような行為を受け入れてくれるのか?」
と思ってしまう。と。
こうした悩みをもつtrans男性は結構多いのではないか?と彼は言います。
SNSの中には、transやあるいはcisの方の性的欲求を満たすためのコミュニティーが多く存在しているんだそうです。
パートナーに自分の性的願望を打ち明けられなかったり、
拒絶されたりして叶えられない人たちが実際に会って性交を楽しむこともあるそう。
FtMの男性の場合は、こうしたコミュニティーで「FtMが好きなcis男性」と男性の体同士、男性器と女性器の性交をしたり、「FtM同士」でバイブやおもちゃを使ったセックスをしたりするそうです。
彼は、こうしたコミュニティーが多く存在する背景には、
彼のように愛する女性と性的願望を満たせないFtMの存在があるからなのではないか?
というのです。
なるほどね~
そういえば最近、別の勉強会でcis男性cis女性カップルで、男性がそうしたコミュニティーに参加していることで不和になってしまったという話を聞きました。
このカップルの場合も、男性の性的願望を女性が精神失調をきたすほど拒絶してしまったことがきっかけの様でした。
そう考えると、transもcisも問題の根底は同じかも知れない…。
「自分の性的願望をパートナーに言えない」という問題。
この根底には、おそらく「拒絶されることへの恐怖」があるのだろうけど…。
では、何に対する拒絶なのか?
たとえばバイブを使ったplayをしたい男性がいて、
彼女に「おもちゃやバイブを使うplayは嫌!」と言われたとします。
これは「playまたは行為そのものに対する拒絶」ですよね?
「男性自身に対する拒絶」ではない。
なので、拒絶されても気にしなくていい拒絶です。
では、女性器をもつ男性が、
彼女に「女性器を見たり触ったりするのは嫌」と言われたとします。
これは??
彼女が否定したのは「女性器」であって、「男性自身」ではないはずです。
でも、男性は
「女性器を持つ自分への拒絶」として感じてしまうかも知れません。
さらに
「自分の男性性を拒絶された」→「自分自身を拒絶された」
になってしまうかも知れません。
似たお話に、乳がんで乳房切除をした女性がSexに消極的になってしまったという話があります。
(たしか海外の医療ドラマ『ER』でDr.カーターがそうした女性と恋愛関係になる、みたいな話があったようななかったような…)
乳房は女性のアイデンティティになりうる体の一部です。「乳房がなくなってしまったことで、夫がセックスを避けるようになった」という悩み。
(実際には夫は妻を気遣って誘わないだけの場合もありますが、本人からすればそう感じてしまう訳です。)
さらに、
「乳房がないことを拒絶された」
→「乳房がない自分を拒絶された」
→「自分の女性性を拒絶された」
→「自分自身を拒絶された」となってしまうのです。
もしもパートナーからなにかを拒絶されそうな時、拒絶された時に、
それは「何に対する拒絶なのか?」
その拒絶は、「自分自身への拒絶」になるのかどうか?
を整理する必要があると思います。
一方、拒絶する側について。
もし、自分がパートナーに対して何かを拒絶するときに、
それはパートナーの「自分自身」
あるいは「アイデンティティ」を拒絶することにならないかどうか?
をよく考えてから拒絶を伝える必要があるでしょう。
その拒絶がパートナーの「自分自身」を拒絶することにはならない、と思って拒絶した場合でも、相手はそう受け取ってくれない場合があります。
人は誰でも、場合により、拒絶された時に「自分自身を拒絶された」と思ってしまうことがあるからです。
(たとえそれが「今日は焼肉にしよう」という提案に対する拒絶だったとしても)
そんなときはよく整理して話合う必要があるでしょう。
「その拒絶は何に対する拒絶なのか?」
ただ、今回のFtMのSexについては、うーん。どう整理しましょう?
セックスには3つの要素があるといわれています。
「生殖」「快楽」そして「コミュニケーション」です。
Sexの質を上げるのは間違いなく「親密度」です。精神的な結びつきです。
しかし、Sexは「肉体なくしてはとれないコミュニケーション」です。
セックスにおいては「肉体」要素も「精神」要素と同じように大切。
もし、パートナーから自分の肉体を拒絶されたら???
もし、FtMが、その肉体を拒絶されたら???
それは「FtMとのSexすることを拒絶」されたことになるのでしょうか?
それは「自分自身への拒絶」ではないかもしれませんが、
「男としての自分を好きになってくれた」ということが、
「彼の精神面の男性性のみを好きになってくれた」ということだったのか???
だけど、彼の肉体も「彼自身」であるはずです。
Sexは、相手の肉体を愛で慈しむ行為なのだと思うのです。
ここまで、彼女が「彼の肉体を拒絶したら?」という仮定でお話してきましたが、
そもそも、本当に彼女は彼の肉体を拒絶するのでしょうか?
彼の肉体は彼の肉体であって、
彼の性器が男性器であるとか女性器であるとか、関係あるのでしょうか?
私はFtMの方とはお付き合いしたことがないので、想像の域を越えません。
私は女性みたいに発育した乳房をもつ男性(太った男性)は苦手です(笑)
でも、
愛して傍にいる時点で肉体に対しても愛情も持っているのではないかと思うのです。
本当に「彼の性器が女性器であること」がいやだったら、彼を愛したりしないのではないか?
うーん…。
深淵なり。
この分野は、私にとっては未知の領域だったので、とても刺激を受けました。
でも、根本にあるものはtransだろがcisだろうがレズビアンだろうがホモセクシュアルだろうが変わらないんだな~とも思いました。
2021.8.7
村田佳菜子医師