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挿入に対するnegative感情について

ほんとに時々ですが、私、金縛りにあうことがあります。
これは科学的に説明できる現象で、何もオカルトの話をしているわけではありません(笑)

10代の頃はよくなっていました。
今はほとんど起こりません。前回あったのも数か月前かな?

いつもだいたい就寝して寝付くまでの間で、まず恐ろしいイメージが先行します😨

ひとりで寝ている状態で、部屋の中で物音がしたりすると
「なにかいる?」と怖くなり、そのあと徐々に体が動かなくなっていきます😨

そして、別の怖いイメージ。男性が口論する声や赤ん坊の泣き声が聞こえたり、髪の長い、顔の見えない女性のイメージが頭の中を占領してしまいます😨

考えちゃいけない、考えちゃいけない、と振り払おうとしてもどんどん増幅していき、頭の中を満たしていきます。

体も動きません😨

でも、体を動かさなくちゃ!と必死に頭を横にふろうともがき、なんとか振り切れると、イメージもぱっと消えていきます。手も足も動くようになります。

この怖いイメージがどこから来るのか。体が動かないことと怖いイメージはどうした心理的、科学的関連があるのか、よくわかりません。

 

さて、私の患者さんに、
腟になにかを挿入しようとすると、私と同じような体験をする人がいます。

今日は挿入障害の方の心理面のお話をしたいと思います。

 

 

この女性は30代後半で(A子さんとしましょう)、
旦那さんとは大学生からのお付き合いで、ご結婚されて8年になります。

 

結婚後一年ほどはなんとか挿入障害を解決しようと、いくつかの医療機関を受診するも、ダイレーターの話を聞くたびに嫌になってしまい、何度も挫折を繰り返しました。

そのうち挿入障害についてはご夫婦の間で話題にのぼらなくなり、
その後7年ほどはスキンシップもありませんでした。

そんなふたりが、ついに私の外来に受診して下さり、
現在ダイレータートレーニングを頑張っています。

このご夫婦につていはいつか詳しくご紹介したいのですが、
今回は、挿入に際してA子さんの頭に浮かぶnegative imageについてご紹介したいと思います。

 

初診当初、
ふたりはハナから「挿入障害の解決は無理だろう」と思っていらっしゃいました。

「20年弱のふたりの関係のなかで解決しなかったのだから、そう簡単に解決するわけがない」

でも、おふたりはお子さんが欲しかったので、
「それならシリンジ法ができるようにしてもらおう」そうゆう発想でいらっしゃったのです。

 

どうしてそんなに挿入が難しいのか??

A子さんは挿入に際して怖いイメージが湧いてしまい、どうしても挿入を拒絶してしまうのです。

 

実は、これは多くの挿入障害の患者さんに共通している訴えです。

「痛くないのはわかっているんだけど、どうしても、痛いんじゃないか?と不安になってしまい、物を挿入することができない」

 

A子さんの場合は、これがもっと強烈でした😨

かなり不安や緊張が強そうだったので、
私はA子さんに挿入に際して浮かんでくる気持ちを言葉にして書いてきて欲しいとお話しました。

この課題は、必要な場合はほかの方にもよく出すのですが、みなさんあんまりうまくできません。

たいていの場合、それはnegativeなもので、思いだしたくもないものなのでしょう。

そんな中、A子さんは旦那さんと一緒に、この課題を完璧にやってきました

 

A子さんは指やダイレーターを腟に挿入しようとするときに

「腟内をハサミやカッター、ナイフ、剃刀などでぐちゃぐちゃに傷つけられる、
 細い糸で性器を傷つけられるイメージ」😨

が頭の中に湧いてくるんだそうです。

こうしたnegative imageが湧いてくると、
「焦り、緊張」が出てきてしまい、それにより

体がこわばったり、呼吸が浅くなったり、動悸がしたり、
といった身体反応が出現します😨

 

そして、同時に

「こんなことを考えている自分はおかしいのではないか?」

「夫や他人が知ったら気持ち悪いと思うのではないか」

という不安も同時に起きてくるのだそうです。

 

更に、A子さんはこれらの「恐怖感の背景」についても分析しています。

その背景とはなんなんでしょうか?

それは、「コンプレックス」だったのです。

 

子供連れを見かける度に、「自分はまだ挿入もできていない」とコンプレックスを感じる。

挿入できないことが、

「人として不完全」

「人と同じことができないという絶望感」

「わたしだけ異常」という不安

 

こうしたnegativeな感情が、結婚以来8年間膨れ上がってしまった。

このコンプレックスや焦りの感情が、挿入の際の「恐怖イメージ」を呼び起こしているのだと、A子さんは自己分析しました。

 

この課題を、彼女は夫と一緒にこなしました。

彼女が口で説明し、それを夫がWordに打って、私に提出してくれました。

今回、A子さんにこうした心理背景があることを初めて夫婦で共有したそうです。

共有したことで、
その後もやのように立ち込めていたnegativeな感情が徐々に薄れてきているような気がする、とふたりは語ってくれました。

 

そして、次にどうしたらいいか、という話になりました。

夫はA子さんの頭に浮かび上がってくる「恐怖イメージ」をなくして、ダイレータートレーニングを勧めるようにしていきたい。と考えていました。

しかし、私はふたりに
「そうした恐怖イメージをゼロにするには時間がかかります。ダイレータートレーニングをすすめていき、徐々に挿入にも慣れることで恐怖イメージが湧いてくる頻度や、その強度を下げていくのがいいと思います。」とお話しました。

 

これは、私の勘だったのですが、
たぶん、恐怖イメージをゼロにするのってかなり難しいんですよね。

私が似たような体験をしたことがあるからそう思ったんだと思います。

 

人って、あることについて
「考えるな!考えちゃいけない!」
と思えば思うほど、そのことについて考えちゃいますよね?

「ピンクの熊🐻について考えるな」
といわれると、頭の中にぴょこん、と現れるわけです。ピンクの熊🐻が(笑)

ピンクの熊🐻について考えたくない、と思ったら、
今度はピンクの象🐘、
つまりなんでもいいけど別のことについて考えるようにすればいいのです。

なので、「今度「恐怖イメージ」が湧いてきたら、「ピンクの熊🐻」を反射的に思い出すようにしてみて下さい」とお話してみました
(翌日、「うなぎ犬」にすればよかったと思い出し真剣に後悔しました…)。

 

「それでも「恐怖イメージ」から抜け出せない日は、ダイレータートレーニングは中止にしましょう」ともお伝えしました。

A子さんは本当に真面目で頑張り屋さんなので、恐怖イメージが頭いっぱい占領している状況でも、15分もかけて旦那さんの指の挿入にtryしていました。

 

ダイレータートレーニングは「三歩進んで二歩下がる」。

できない日があってもいいんです。

 

 

また、A子さんはこうした感情が湧くのは
異常ではないか?」(「精神面で不健康」つまり「精神的におかしい」のではないか?
という意味だと思います)と思っていました。

 

そんなことはありません!

 

挿入障害の方はみんな、程度の差はあれnegative imageを頭に浮かべています。

中にはA子さんと同じように
コンプレックスや強いnegative imageにとらわれてしまう方もたくさんいます。

 

挿入障害の方でなくても、特定の状況で特定のnegative imageが湧いてしまう人もいるでしょう。

 

今回、A子さんと旦那さんが「negative 感情の言語化」という課題を真面目に完璧にこなしてきてくださったおかげで、私もとても勉強になりました。

 

Negative感情は言語化することでcontrolできるんだそうですが、挿入障害の方にも有効であることがわかりました。

それを夫婦で共有することにより、
夫は、より妻に共感的になれますし、意識しなくてもダイレータートレーニング時の態度や声掛け、妻への気遣いに影響してくると考えられます。
妻も、わかってもらえていると夫に対して親密感をおぼえられ、安心感も出てくるでしょう。

そしてそれを第三者に話すstepを加えることで、
より客観的にご自分の状況が異常でないことを認識していただけると思います。

 

すでに女性性機能外来に受診して下さっている方は、是非私と一緒にご自分のnegative感情についてお話してみましょう!

 

まだ受診に至っていない挿入障害の方は、
是非一度ご自分のもつ「挿入に対するnegative感情」について紙に書いて言語化してみて下さい。
そしてパートナーにお話してみて下さい。

解決が幾分スムーズになるかもしれません。

 

自分では難しいな、相手に伝えるのは難しいな、と感じた方は、
是非、女性医療クリニックLUNAネクストステージの女性性機能外来へお越しください♡

2021.8.20
村田佳菜子医師