性欲低下について②　ホルモン異常と男性ホルモン補充療法

今日は、性欲低下の原因としてのホルモン異常と、あらゆる性欲低下にたいして万能な男性ホルモン補充療法について簡単にご説明します。

ホルモン異常

読者の皆さんは、比較的若い方が多いかと思います。
私の外来に性欲低下を訴えていらっしゃる方も、20代30代の方が多いです。

そうした方のセックスホルモン値（女性ホルモン：主にエストロゲン、男性ホルモン：主にテストステロン）を測定すると、
正常～正常下限値の方がほとんどです。

こうした場合、性欲低下の原因はホルモン異常単独ではなく、別の要因が考えられます。

ホルモン値に異常が出る場合、女性ホルモン値や男性ホルモン値の低下、プロラクチンというホルモンの上昇などがあります。

性欲低下とともに3か月以上月経がない場合は、
卵巣機能の異常があり女性ホルモンが低下していたり、
プロラクチンが上昇していたり（この場合に首から乳汁がでるなどの症状が典型的です）、
一緒に甲状腺ホルモン値の異常があることがあり、
この場合は婦人科などの医療機関での治療が必要ですので、
3か月以上月経がない場合（または高度の不順がある場合）はかならず婦人科を受診してください。

単純に女性ホルモンが少ない場合は、低用量ピルを内服しているケースをよく見かけます
（私のエストロゲン値も時におばあちゃんレベルです(笑)）。

性欲低下が問題となる場合は、低用量ピルを中止したり、別のお薬に変更したりします
（低用量ピルにはたくさん種類があるので、それらに変更するか、もしくはジエノゲストというお薬も選択肢です）。

月経痛や月経周囲の気分不調が重く、やめられない場合は男性ホルモンの補充をすることで改善が期待できます。

女性の男性ホルモン値は約1/10です。ここに少し男性ホルモンを補充することで、性欲の上昇が期待できます。

男性ホルモン補充療法について

実は、性欲低下にはいろいろな原因があり、それらが複雑に絡まり合っている場合も多いものの、
臨床的には、女性の性欲低下には男性ホルモン（テストステロン）を投与するのが最も即効性があり確実な方法☆彡です。

女性に男性ホルモンを投与しても大丈夫なの？とお思いかもしれません。

ご存じの方も多いかもしれませんが、卵巣からも男性ホルモンは分泌されています。
女性のテストステロンの血中濃度は男性の約1/10。男性ホルモン値が女性として正常範囲内の方でも男性ホルモンを投与しても大丈夫です。

女性の性欲低下の場合、私の外来では男性ホルモン（エナルモン・デポー）の皮下注射を行っています。

だいたいのケースで一回の注射で効果があり、副作用もほとんどありません。

考えられる副作用は、にきび、嗄声（声がかれる、裏返る）、ひげ、月経不順、多血症などですが、1,2回の注射ではほとんど見られません。

卵巣の機能は大丈夫なの？と
ご心配かもしれませんが、月経不順が起きたとしても一過性ですぐ元に戻ります。

トランスジェンダー医療における経験で、男性に女性ホルモンを投与した場合、不可逆的な精巣の機能低下がみられますが、
女性に男性ホルモンを投与した場合、男性ホルモン投与中に妊娠にいたったケースもあり、卵巣機能が温存されていることがわかっています（卵巣は強いんです(笑)）。

ほとんどのケースで、1回目の注射の３～７日目から効果が見られます。

…といっても、「セックスしたい！」という性欲がすごく上がった、という感じではなく、
パートナーからの誘いがあったときに、いままでは拒んでいたのが「今日はしてもいいかな…」と思える程度です。

でも、これでいいんです。

この「してもいいかな」と思ったタイミングで、質の高いセックスをすることでいい循環が生まれます（性欲低下について①参照）。
いい循環に乗ってしまえば、もう男性ホルモンの注射は必要ありません。

なので、カップル間の調整が必要な場合は少し調整をしてから、あるいは、調整しながら数回の注射の投与になります。
注射だけやってみて、性行為ができない場合に調整を行うこともあります。

一回の注射は1500円前後です。

最近、性欲低下を訴えて受診される方が増えてきています。悩まれている方は是非ご相談下さい♡

2021.11.28
村田佳菜子医師