妊活に効く漢方って?私ならこーする。 妊活入門番外編 東洋医学からみた妊活
今日は、私が診療のために勉強した「妊活に使える漢方」の内容をまとめてみました。
症状別に見た漢方の使い分けをざっくりお話して、じゃあ、私が妊活で漢方を使うならどうするか、というお話をしたいと思います。
症状別
東洋医学で不妊を考える場合、
冷え❅、胃腸障害に注目して治療を行っていきます。
ある研究では、
不妊女性の半分以上に冷え症状が、
冷え症状のある女性の半分に胃腸症状があり、
こうした症状にfocusして不妊治療を行うと、妊娠率がupするんだそうです。
また不妊女性の1/3以上にいらいら症状が認められたそうです。
ストレスは心身一如を基本とする東洋医学の中では悪循環を生み出すと考えられるため、精神症状を改善することは不妊治療には有効であると考えられます。
具体的には…
冷え❅
まず当帰芍薬散、桂枝茯苓丸で血流改善を狙います。
どちらも婦人科3大漢方(+加味逍遙散)ですが、この2剤の使い分けは、
虚弱体質な場合は当帰芍薬散。
比較的体力がありがっしりした体型の場合は桂枝茯苓丸。
桂枝茯苓丸は女性に多い瘀血(血の滞りで起こる症状。手足の冷え、ほてり、めまい、頭痛など)を改善します。
当帰芍薬散が無効な場合、特に下腹部の冷えがきになる場合、温経湯。
胃腸症状
胃もたれ、胃痛、下しやすい、膨満感がありすっきりしないなどの胃腸症状がある場合は、補中益気湯、四物湯。
ストレス
加味逍遙散で排卵前の女性ホルモン(エストラジオールup),排卵前の卵胞径up,頸管粘液量up,黄体期Pup,内膜厚up, GABAを介した抗ストレス作用あり。
焦燥感が強い場合 四逆散。
ほか、柴胡桂枝湯、柴苓湯、半夏厚朴湯、香蘇散
他に、不妊の原因になるといわれている浮腫みがある場合は当帰芍薬散、柴苓湯。
などが有効です。
…と言っても、実際に漢方を処方してもらう方は少ないでしょうから、
「冷え」「胃腸症状」「ストレス」「浮腫み」を改善するような生活習慣を心がけましょう。
これから夏ですが、
エアコンによる体の冷えに気を付けたり、
冷たいものばかりでなく暖かい食事を積極的に摂ってみたり、
適度に運動して筋力を保つようにすれば、体温を上げられます。
シャワー浴でなく湯船につかるのいいですね。
胃腸は労わるようにしましょう。
胃に負荷ののかかる食事を控える、暴飲暴食を避ける、下痢や便秘の症状がある方は改善してみましょう。
妊活入門でも何度もお話していますが、ストレスはよくないことばかりです。
忙しいかもしれませんが、一日の中に自分を客観的にみる時間を作ったり(趣味をつくる、スポーツをする、瞑想もおすすめです)、
カップルでゆったりする時間を作るなど工夫してみてください。
水をたくさん飲む。
立ちっぱなし、座りっぱなしを避けよく歩くようにする。
体を温めることで浮腫みをとることができます。
カップルでマッサージをしあうのもいいですね。
不妊治療中
・排卵率upに、排卵前に八味地黄丸、瘀血があるなら桂枝茯苓丸or 補中益気湯。併用で排卵率upも。温経湯もOK
八味地黄丸は腎生殖機能全般的にサポート。卵巣機能を強める。
特に、高齢不妊なら八味地黄丸で発育卵胞数up。採卵時の卵子回収数up。授精卵数。初期胚到達数up。
胚移植前は数週間前から温経湯が内膜保護に。移植後は当帰芍薬散が着床を促す
・黄体機能不全に当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、温経湯
・PCOS、高テストステロン血症があるなら芍薬甘草湯、高LH血症あるなら温経湯、紫令湯
・高プロラクチン血症による月経不順は芍薬甘草湯に下垂体前葉ドパミンレセプター刺激作用あり
・肥満による不妊に防風通聖散で褐色細胞活性化、インスリン抵抗性改善
・痩せによる不妊に六君子湯、四君子湯、人参湯で食欲増進効果
…で、結局、もし私がタイミング法をするなら…
私は筋肉質で体力もある体質ですが、ピルを飲まないと下半身が冷えるので、桂枝茯苓丸かな…て感じですが、胃腸も弱いし体温調節も下手なので温経湯も捨てがたい。
(温経湯は冷えもほてりもコントロールしてくれ、胃腸症状にもよくてオシなんですが、乾燥をうるおしたり栄養障害にも使えたりと、虚弱体質や年齢的には少し上の人に使うイメージ)
どっちかをベースにして、排卵前は八味地黄丸、排卵後は着床するであろう時期まで一週間当帰芍薬散。
むくみやすいのですが、排卵後当帰芍薬散を飲むのでこれでカバー。次の月経まで継続してもいいかも。
ピルを飲まないと気持ちの起伏が大きくなるので、ほかにも妊活によい効果のある加味逍遙散をプラスしてもいいかも知れません。
これで…甘草のトータル量を計算します。八味地黄丸は甘草なし、桂枝茯苓丸も甘草なし。
温経湯は2g/day。当帰芍薬散も甘草なし。加味逍遙散は1.5g/day。で。甘草の一日マックス量3.5g/dayで、5g/day以下なので大丈夫(甘草は摂りすぎると電解質異常を起こします)。
ちなみに、今回お話した漢方の処方の仕方は四診と呼ばれる、漢方における診察を使わずに漢方薬を選択しています。
専門の先生がしっかりおなかを触ったり、舌をみたり、脈を取ったりして診察した場合、
もっと適切な処方をしていただけると思うので、興味がある方は漢方の専門の先生に相談してくださいね★
ちょっと専門的な話題でしたがこんな感じです。参考にしてみて下さい★(参考にしずらい(笑))
2021.5.20
村田佳菜子医師