女性泌尿器科とリハビリテーション、そしてエビデンス -女性泌尿器科-
「リハビリテーション」 どんなイメージがありますか?
脳卒中による手足の麻痺、骨折等での歩行困難,五十肩や膝関節の痛み、パーキンソン病など進行する病気・・・これらに対するリハビリテーションを思い浮かべるのが一般的だと思います。泌尿器科とリハビリテーションは結びつかないかもしれませんね。
そもそもリハビリテーションは、re(再び)+ habilis(適した)、すなわち「再び適した状態になること」「本来あるべき状態への回復」などの意味を持ちます。また,権利の回復、復権といった意味合いもあります。
女性泌尿器科で取り扱う尿失禁、過活動膀胱、骨盤臓器脱、女性性機能障害の原因の1つとして、骨盤底機能障害があります。出産や加齢,もともとの体質、ホルモン、体重増加、便秘でいきむ習慣などで骨盤の底についている筋肉(骨盤底筋群)が障害されてしまうことにより症状を引き起こします。「機能障害」が女性泌尿器科的な問題を引き起こしているわけですから、そこには当然リハビリテーションの考え方が適応されるわけです。例えば,尿失禁で生活に支障を来たしていた人が尿失禁で悩まなくなれば、それは「本来あるべき状態への回復」なのです。人間らしさの復権、と言っても過言ではないでしょう。
骨盤底のリハビリテーションは、1940年代に米国の産婦人科医Kegel(ケーゲル)という人が骨盤底筋体操により尿失禁の治療に成功したことを発表したのが始まりとされています。その後、特殊な器具を使った方法や、電気刺激療法など、骨盤底に対する様々なリハビリテーションが試みられ治療効果が続々と発表されてきました。現在では,腹圧性尿失禁に対する効果は80%とも言われ、エビデンス(医学的根拠)が確立されています。薬物治療や外科的治療を行わずに、生活の質(Quality of Life ; QOL)を向上させられる。それがリハビリテーション治療の醍醐味でもあります。もちろん,症状の程度によって治療効果には個人差がありますが、泌尿器科的問題も骨盤底の機能回復により治療効果が期待できるということを是非知って頂きたいのです。
女性医療クリニックLUNAネクストステージ
理学療法士・排泄機能指導士・排泄機能検査士
重田 美和