コラム

手掌多汗症の治療

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日差しも強くなり、徐々に夏らしさを感じる日が増えてきました。気持ちのよい気候とはいえ、蒸し暑い日もありますね。走ったり、歩いたり、日常生活の中でも汗をかくことが増えてきたのではないでしょうか?


この汗をかく、ということに対してみなさんはどのようなイメージをおもちでしょうか?


運動して思い切り汗をかき、さわやかな気持ちになることも多いと思いますが、汗をかいてべたべたしたり、緊張してかく汗などでは、だれでも少し不快な気分になるかと思います。ただこの「汗をかく」ということ自体に、日々の行動を制限されたり、時にはその人の性格にまで影響を及ぼしてしまう病気があることをご存知でしょうか?


「手に汗握る~」という形容がされるほど、誰でも緊張や興奮で手に汗をかくものです。でもそれが、てのひらから滴るほど、しかも一日中続くとしたら、、、手掌多汗症は、まさにそんな症状なのです。


多汗症の中には、原因となる基礎疾患(甲状腺機能亢進症、感染症、薬剤性など)がある場合の二次性の多汗症、そうでない特発性、つまり原因となる基礎疾患のない一次性の多汗症があります。手掌多汗症は一次性の特発性多汗症です。部位はほかに、足の裏、腋の下、顔面などが知られており、全人口の0.61%ほどの人が罹患しているとも言われています。

その診断の基準として両側対称性に発汗すること

          発症年齢は25歳以下であること

          睡眠中は発汗がないこと

          家族歴があること

          週に1回以上の多汗のエピソードがあること

          発汗の程度が日常生活に支障をきたすほどのものであること

等が挙げられます。2項目以上が満たされる場合に「特発性多汗症」として診断されます。


手掌多汗症の方の中には、人と握手ができない、試験のときに答案用紙がやぶれてしまう、パソコンや携帯など電気機器がこわれてしまうなどの悩みを持つ方が多くみられます。こういった悩みは小さなことのように見えて、実際には日常生活のQOL(クオリティオブライフ)を著しく損なう可能性があります。またこれらの悩みによって、幼少期から、しかも日常的にうける身体的、心理的な行動の制限により感情的にも社会的にも大きな影響を受けることがあるのです。

 

まず試される治療としては塩化アルミニウム溶液を外用する方法です。夜寝る前に両手もしくは足底、脇などに外用するだけです。布手袋をして、塩化アルミニウム液をその布手袋に浸し、そのうえからさらにゴム手袋をする閉鎖密封療法を行うとより高い効果が得られる場合があります。副作用としては、アルミニウム液による刺激感、かぶれなどがありますが、比較的安価で簡単に、安全に行うことができます。


次に、イオンフォトレーシスという治療があります。直接電流を通電させる治療です。電流を流すことによって表皮内汗腺が閉塞する説や、浪曲測での電気分解した水素イオンの作用である機序が考えられています。妊婦さんやペースメーカーを装着している方以外は安全に使用でき、皮膚炎などの副作用も塩化アルミニウムなどよりすくないと言われています。週に1から2度の通院で複数回行わなければならないこと、処置に30分以上かかるため、簡便さでは外用に劣ります。

 

以上のような方法でもコントロールのつかない場合、ボツリヌス毒素製剤を掌に注射する方法もあります。外用麻酔薬を用いて外来で短時間に行うことができ、3か月から半年ほど効果が持続することが期待できますが、処置に強い痛みを伴うこと、自費診療で高額となることなどがデメリットとして挙げられます。

 

様々な方法を試しても、満足のいく効果が得られなかった場合、交感神経遮断という手術も選択肢としてあります。胸腔鏡を使った全身麻酔による手術です。非常に高い効果が得られますが、行っている施設が限られることや、手術・麻酔に伴うリスク、また代償発汗といって、手や腋、足の汗が止まる代わりに、背中やおしりなどほかの部位の多汗がおこる代償性発汗のリスクが挙げられます。

 

多汗症という疾患の特徴として、人知れず悩んでしまう方が多いことも挙げられると思います。一人でお悩みの方は、ぜひ一度、気軽にご相談ください。治療の方法を一緒に模索していきましょう。

LUNA骨盤底トータルサポートクリニック 皮膚科 泉佳菜子医師