コラム

免疫力とウイルス感染症

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4月からの新生活が始まって、そろそろ2か月がたちます。知らず知らずのうちにそろそろ疲れもたまってくるころでしょうか。頑張りすぎて疲れたり、季節の変わり目は気候も安定せず体調がすぐれない時もありますよね。こんなとき、皮膚科の外来には「口唇ヘルペス」や「帯状疱疹」の患者さんが少し増えます。なぜでしょうか?答えのカギは免疫力と、ヘルペスウイルスの特徴にあります。


皮膚には様々な感染症が起こりえます。なかでも細菌、真菌、ウイルスが原因の皮膚感染症は一般的で、だれでも一度は悩まされたことがあるのではないでしょうか?


皮膚科の外来でウイルス感染症として最も多くみられるのは「単純ヘルペスウイルス感染症」、「帯状疱疹」です。どちらも名前を知っている、という方は多いのではないでしょうか?実際、単純ヘルペスウイルスには1型と2型がありますが、日本人では1型には実に5070%の人が、2型には510%の人が感染していると言われています。また、帯状疱疹はヘルペスウイルスの1種である「水痘・帯状疱疹ウイルス」が原因の皮膚感染症ですが、原因となるウイルスは水疱瘡のウイルスと同じです。水疱瘡も多くの方が子供のころに発症したという経験を持っているのではないかと思います。つまりほとんどの方が「水痘帯状疱疹ウイルス」にも感染していると言えます。いやそんなことはない、私は水疱瘡にかかったことはないとおっしゃる方もよくいらっしゃいますが、ヘルペスウイルスには感染していても症状がでないことがよくあります。中には感染しても気づかない方もいらっしゃるということです。しかし、たとえ症状が出ていなくてもヘルペスウイルスが体の中からいなくなることはありません。一度感染すると、症状が現れなかったとしても生涯にわたり体の中に潜んでいる、それがヘルペスウイルスの特徴なのです。


次に単純ヘルペスウイルスと水痘帯状疱疹ウイルス、それぞれについて説明していきましょう。まず単純ヘルペスウイルスには1型と22種類のウイルスがあります。不思議なことですが、身体の中でこれらのウイルスはすみわけをしており、1型は口腔や眼、生殖器に、2型は主に生殖器に感染します。1型の初感染ではその9割もが、症状の現れない感染、不顕性感染です。この1型単純ヘルペスウイルスによる代表的な皮膚ウイルス感染症が、「口唇ヘルペス」です。多くの方に発症経験のあるとても身近な病気です。口唇ヘルペスでは唇やそのまわりのピリピリした違和感やかゆみから始まり、痛みを伴う水疱が出現します。多くの場合は1週間ほどでかさぶたになり治癒していきます。初めて症状が出るときは症状が重く、症状が再発する場合は初回よりも症状が軽くなることが多くみられます。感染経路は症状が出ている人の水疱、唾液、涙などによる接触感染ですが、このウイルスの感染力は大変強力なため、ウイルスが付着したタオルやコップなどからも感染する可能性があります。つまり、知らないうちに感染している場合も多いということです。2型でも1型でも起こりうる感染症に性器ヘルペスがあります。性器ヘルペスは主に性行為によって感染します。口唇ヘルペスが性器に感染し性器ヘルペスを発症することもあります。症状としては、男性の場合は亀頭や包皮に、女性の場合は会陰部や陰唇に好発し時には肛門や臀部、太もも、子宮頸部にまで及ぶこともあります。初感染時は症状が重く、性行為などの感染機会から2~10日で発症、発熱や全身倦怠感、リンパ節腫脹とともに激痛を伴う小水疱ができ、それが破れて小潰瘍を作ります。2,3週間で治癒に至りますが、症状が重い場合に排尿痛や歩行障害を起こすこともあります。また2型による性器ヘルペスは再発傾向がとても強いのが特徴であり、症状は軽くなることが多いですが、数週間ごとに再燃を繰り返すこともあります。


さて、次は水痘帯状疱疹ウイルスについてです。初感染時には水疱瘡として発症します。ところが水疱瘡が治った後にも、全身の神経節にウイルスが潜伏します。症状がなくても子供のころに水疱瘡にかかった経験がある方はみな、このウイルスを持っていることになります。症状は、身体の左右どちらか一方にまずピリピリと刺すような痛み、皮膚の違和感などの神経痛が生じ、その後痛みが強まり、神経症状があらわれているところと同じ皮膚に帯状に水疱や紅斑が現れます。軽度の発熱やリンパ節の腫れを伴うこともあります。顔面に帯状疱疹が現れた場合、角膜炎や結膜炎などの合併症を起こす場合もあります。そのほか耳鳴り、難聴、顔面神経麻痺などが生じることもあり、これらは「ハント症候群」と呼ばれています。また皮膚症状が治った後に後遺症が残ることもあります。この後遺症は「帯状疱疹後神経痛」と呼ばれ、ピリピリするような痛みが持続します。口唇ヘルペスや性器ヘルペスなどの単純ヘルペスウイルス感染症も帯状疱疹も治療の基本は「抗ヘルペスウイルス薬」です。ウイルスの増殖を抑える薬で、急性期の皮膚症状や痛みを和らげ治るまでの期間を短縮してくれます。また、帯状疱疹でおこる合併症や、後遺症を抑える効果も期待されます。体の中では免疫力とウイルスのせめぎ合いが絶えず繰り広げられています。発熱や疲労、ストレスだけでなく、紫外線を多く浴びたり、アルコールの多飲によっても免疫力は低下することがあります。症状が出たということは何らかの原因で免疫力が低下しているということなのです。ですから、自分の体調を見直してみるきっかけにするとよいでしょう。皮膚に出たシグナルが体調の変化をおしえてくれるといっても良いかもしれません。


LUNA骨盤底トータルサポートクリニク 皮膚科 泉佳菜子医師