コラム

脳血管障害や脊髄障害でも、あきらめず骨盤底筋トレーニングを行いましょう

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今回は、脳梗塞のような脳血管障害、脊椎狭窄症なでの脊髄障害による尿失禁などの下部尿路症状に対する、骨盤底障害治療の話です。



確かに、脳血管障害や脊髄障害による神経因性膀胱のための尿失禁は、出産等による骨盤底障害による症状より重症です。脳血管障害による神経因性過活動膀胱に対しては、比較的大量の抗コリン剤の使用や、抗コリン剤とβ3刺激剤の併用による膀胱過活動の抑制が行われます。また脊髄障害による尿失禁に関しては、排尿筋尿道括約筋協調不全による尿道内圧上昇による膀胱内圧の上昇、さらに水腎・水尿管、最終的には腎後性尿失禁などの合併症が起こる可能性があるので、抗コリン剤とβ3刺激剤の併用による膀胱過活動の抑制とともに、清潔間欠導尿が導入されます。これはぜひ行われるべき治療です。



それでは、神経因性膀胱による尿失禁の治療は、抗コリン剤とβ3刺激剤と清潔間欠導尿しかないのでしょうか?


そんなことはありません。膀胱過活動の最新治療としては、膀胱鏡下のA型ボツリヌス毒素(ボトックス®)の膀胱筋肉への注入療法が、世界的に施行されています。(もちろんLUNAでもこの治療を導入していますが、まだ健康保険適応ではないため自由診療になります。)


さらに以前は、神経は中枢から末梢へ支配されており、その逆はないと言われていましたが、最近は末梢神経刺激による中枢神経の賦活作用があると言われるようになってきました。つまり骨盤底トレーニングをはじめとする骨盤底リハビリテーションや、磁気や電気による骨盤底筋や骨盤神経に対する刺激療法は、神経因性膀胱による過活動膀胱の症状の改善に寄与すると考えられるのです。

また脳血管障害や脊髄障害には、障害の原因や場所によって障害が不完全な可能性も大きいと考えらます。この場合中枢神経もある程度生き残っていますので、骨盤底リハビリテーションや、磁気や電気による骨盤底筋や骨盤神経に対する刺激療法はさらに効果を発揮します。

 
これらの神経因性膀胱場合に関しては、手術による症状改善の可能性もあります。例えば尿失禁ならば、しっかり清潔間欠導尿のテクニックを獲得していれば、手術によって尿道抵抗を上げても、尿失禁は改善されます。清潔間欠導尿は、めんどうに感じる人もいると思いますが、排尿困難を訴える患者にとっては、排尿時間の短縮にもなるのです。1日6回5分間を費やす清潔間欠導尿ができれば、他の時間は尿失禁の心配から解放されるのです。



 また神経因性膀胱に骨盤臓器脱が合併している場合も、清潔間欠導尿のテクニックを獲得してもらった後に、骨盤臓器脱の手術をする場合があります。これにより骨盤臓器脱による摩擦のための外陰部出血や帯下の増加は改善します。さらに神経障害が不完全な場合は、仙骨子宮靭帯の補強により排尿困難が改善することさえあるのです。


 歩行障害は、尿失禁の症状を悪化させます。つまり歩行がスムーズになると、尿失禁が軽減します。ですから尿失禁のある神経因性膀胱患者は、リハビリテーションによる歩行障害の改善に努める必要があります。この際に尿漏れや外陰部出血は歩行障害のリハビリテーションの妨げになることがあります。この場合は、勇気をもって尿失禁手術や骨盤臓器脱手術を受けてください。尿漏れや外陰部出血などの不快な症状が消失することで、歩行障害によるリハビリテーションが、スムーズに進行し、排尿症状がさらに改善するという良循環を起こすこともできるのです。



女性医療クリニックLUNAグループ 関口由紀理事長