コラム

クリトリスは露出すべきか否か?

image 泌尿器科が扱う疾患に陰唇癒着症というのがある。陰唇癒着症とは、尿道や膣の出口を左右から2枚の唇のように覆っている陰唇が互いに癒着する外陰部疾患である。まずは、クリトリスの部分が癒着し、さらに進行すると尿道口の部分も癒着して、尿がでにくくなり、排尿時に尿勢が散ったり、排尿後に尿が滴下するようになったりもする。低エストロゲン状態が誘因となり、炎症や感染、外傷などが加わり後天的に発症するとされており、主として乳幼児に多く認める疾患であるとされていたが、近年では高齢化に伴い成人女性においても増加してきている。 治療は、軽症の場合、女性ホルモンクリームや、副腎皮質ステロイドクリームの塗布で、症状が軽快する。しかし、重症の場合は、剥離手術となる。
先日、朝から、その陰唇癒着症の剥離手術をした。下から切り広げて、まず隠れていた尿道口を露出し、さらに剥離をすすめてクリトリスも露出する。このクリトリスのあたりをいかに美しく形成するかが腕のみせどころとなる。ところで尿道口をしっかり出すことに関しては、議論の余地はあまりないと思う。しかし何年、場合によっては何十年も、癒着で露出されていなかったクリトリスを手術で露出させてしまうことには、賛否両論があるかもしれない。患者は、何年もクリトリスが露出していなくとも困っていなかったのだから、”寝た子を起こす必要がない。”との意見である。この問題の解決の鍵は、主に東アフリカで行われている女性割礼の研究が参考になる。
女性割礼は、エジプト、スーダン、エチオピア、ソマリアなどで行われている習慣で、未婚の少女の小陰唇を切開してクリトリスや尿道を隠すように縫縮してしまう手術である。
つまり女性を、人工的に陰唇癒着症にしてしまうのだ。これを受けた女性達のクリトリス性感は、当然低下するが、その代わり別の部分の性感(たとえば乳首)が上昇するという、しかしその後形成手術で、もとのクリトリスがでている状態にもどすと、クリトリス性感がまた復活するとのことだ。
つまり何年もクリトリス性感のなかった女性でも、その形態がもとにもどれば、性感が正常化する可能性があるわけだ。その後、私は、陰唇癒着症の手術の際は、なるべくクリトリスを露出するようにこころがけている。

女性医療クリニックLUNAグループ 関口由紀理事長